2025年04月19日

老いはヤケクソ 佐藤愛子

老いはヤケクソ 佐藤愛子 リベラル社発行 星雲社発売

 インタビューの章が3章、そのほか2章(親族、友人、関係者のこと、そして作品のこと、過去の手記)、合計5章のレイアウト(配置)です。
 著者は101歳になられたそうです。長生きです。執筆はもう能力的に無理だそうです。
 インタビューです。よくおしゃべりされたそうです。
 人に相手してもらうことが嬉しそうだったそうです。

 わたしが高校生ぐらいのころに、佐藤愛子さんと遠藤周作さんと北杜夫(きた・もりお)さんの三人さんが対談されたテレビ番組を観たような記憶があります。仲良し三人組に見えました。たしか、『すばらしき仲間』というタイトルの対談番組でした。
 遠藤周作さん(1996年(平成8年)73歳没)、北杜夫さん(2011年(平成23年)84歳没)です。
 佐藤愛子さんは、1923年(大正12年)生まれ現在101歳です。本には、『百嫗(ひゃくおうな)』と書いてあります。嫗(おうな):歳をとった女性

 佐藤愛子さんのお兄さんであるサトウハチローさんの歌はこどものころからよく聴きました。(1973年(昭和48年)70歳没)
 自分が若い頃に読んでいた本の作者さんは、もう五木寛之さんぐらいが存命なぐらいです。(1932年(昭和7年)生まれ92歳)。

 同じ時代を過ごした人たちが、ひとりふたりと姿を消していく。(亡くなっていく)
 けっこうなプレッシャーがあります。(精神的な圧力)
 わたしのまわりでも、たくさんの人たちがいなくなりました。
 いろいろと思うところはあります。
 きれいごとばかりではありません。
 お互いにケンカするような、それなりの対立もありました。
 されど、対立した者たち同士、どちらもすでにこの世にはおられません。
 あの対立はなんだったのだろうかとふりかえることがあります。
 最後はみんな消えてなくなるのなら対立などしなければいいのに……

 この本のタイトルについて考えました。『老いはヤケクソ』というタイトルです。老いて、新しいことをやることもなし。やりたくても、思うように自分の心身が動いてくれないということはあります。
 ゆえに、こちらの本のタイトル、『老いはヤケクソ』なのか。
 人間死ぬのもたいへんです。なかなか死ねません。お迎えが来るまで、生きるのです。生きているのではなく、まだ死んでいないだけだという状態が続きます。

 ときおり、高齢者施設で働いている方のブログを読むのですが、入所者のみなさんの頭の中が壊れています。若い頃はきっと、バリバリと仕事をしたり、家事をしたりされた、しっかり者だった人たちもおられると思います。でも今は、ご本人の言動がおかしいのです。
 不謹慎かもしれませんが、(ふきんしん:無礼(ぶれい)、失礼(しつれい))長命な人のめんどうをみている子や孫はふと思うのです。『どうしてまだ生きているのだろう……(もう、(たいていは)彼女と同時代に生きていた人たちはこの世からいなくなったのに)』

 長生きするとはどういうことなのだろうかという疑問をもちながら、この本を読むと何かわかるという手がかりがあるかもしれないという気持ちで読み始めるのです。

『「はじめ」に代えて 杉山桃子(佐藤愛子さんの孫)』
 認知機能の衰えがあるものの、今回の本づくりのインタビューでは、ご本人は、うれしそうだったそうです。
『目次を見ながら考えたこと』
 「映画は創作のストーリー」(どういう意味だろう)
 「我慢しない」が信条(佐藤愛子さんは、我慢することを強いられた(しいられた)世代です。戦争体験者です)
 「本当に強いのはお金やモノに執着しない人」(執着する人は多い)

『100歳インタビューについて 山田泰生(やまだ・やすお。新聞記者)』
 歳をとることは、もはや「ヤケクソ」だそうです。

 自分なりに素直に考えると、自分よりも先に配偶者が亡くなったらかなりショックです。
 こどもたちが自分より先に亡くなったら、そんなばかなという気持ちになります。
 友人たちが亡くなると、ああ、あいつも逝った(いった)かと思います。
 もう自分たちの時代は終わりを告げたとあきらめもつきます。
 されど、それでもまだ自分が生きていたら、猛烈な孤独感が襲ってきます。どうすることもできません。長い時間を与えられても、本を読むことも映像を見ることも飽きてしまいそうです。

『第1章 「百嫗(ひゃくおうな)」の心境 100歳インタビュー①』
 耳が遠くなった。
 世間から隔絶された小島で暮らしているような感じがしておられるそうです。
 自分は101歳になった。自分がまだ小さかったころの記憶は、100年前ぐらいの出来事であると語られています。今を生きながら、100年前の記憶をたどるのです。

 きんさん、ぎんさんの話が出ます。わたしが、30代のころのお話です。1991年(平成3年)にNHKで紹介されました。愛知県名古屋に住むふたごのご長寿の姉妹さんでした。おしゃべりじょうずなおもしろい方たちでした。

 以下、佐藤愛子さんについてです。
 長生きすればするほど、友だちがどんどんいなくなる。
 親きょうだいもいなくなる。
 同じ時代をいっしょにすごした相棒たちがいなくなる。同級生はもうひとりもいない。
 愛犬も先に逝ってしまった。(いってしまった。天国へ召された)
 そんな嘆きがあります。なげき:悲しみ

 人と話をすることは好き。だから、今回のインタビューのことも好き。
 映画、『九十歳。何がめでたい』を冒頭30分見たけれど、あまり覚えていない。
 映画製作のことが少し書いてあります。

 (そうなのかと驚くことが書いてありました)
 医者嫌い。40代から医者にかかっていなかった。90代までは、病院なんて行ったことがなかった。
 40代からなじみの整体に行っていた。それで、十分体調管理ができていた。
 
 今は一日ぼんやり椅子に座って庭をながめている。

『第2章 老いはヤケクソ 100歳インタビュー②』
 <みんなヤケクソで老いていっている>
 真面目に老いていたらやれきれない気持ちになるそうです。やりきれない:気持ちがおさまらない。辛抱できない。
 ヤケクソになれば楽ではあるが、端然(たんぜん)とはしていたい。たんぜん:正しく整っているようす。きちんとしている。規則正しく淡々と暮らしながらその時を待つ(あの世への旅立ち)

 世代的に、戦争の話が出ます。戦争体験者の世代です。
 戦時中は食べるものがなかった。食べるものの種類にこだわる気持ちはない。
 肉は好き。魚は白身がいい。そのほかは何も気にしない。
 朝昼兼用の食事をする。娘や孫が用意してくれる。毎回同じものを食べる。こだわりはない。同じものでいい。
 新聞は、朝日新聞と産経新聞を読む。本は読まない。インターネットはわからない。(わたし(熊太郎)は、数年前から新聞は読まなくなりました。不自由はありません。新聞はとっています。家族が読んでいます。なんというか、読まなくても、何がどんなふうに書いてあるか想像できるのです。毎年、同じような時期に同じようなニュースが掲載されます。新聞製作の事前準備として、これから先、1年分の事前原稿の下地(したじ)が用意されているのではないかと思うときもありました)

 佐藤愛子さんは、携帯電話は持っているが使っていない。家ではいまだに、ダイヤル式の電話を使っている。(わたしのまわりでも、ダイヤル式の加入電話を今も使用している友人や親族がいます)

 テレビはつけっぱなしにしてある。見ているようで見ていない。記憶力がなくなり、聞いても記憶が残らない。
 
 お金について:プライドを捨てればお金は稼げる(かせげる)。プライドが捨てられないからお金を稼げない。
 
 父佐藤紅緑(さとう・こうろく)は、75歳で亡くなった。(数え年だと思います。実際は74歳)。兄サトウハチローは、70歳で亡くなった。

 結婚は二度したけれど、恵まれなかった。最初の夫は(昭和18年(1943年)結婚。夫は、昭和26年(1951年)病死)、夫は、戦地から帰ってきたが、モルヒネ中毒になっていた。(腸の病気の痛み止めとしてモルヒネ(痛み止め)を使用していた)。
 二度目の夫は、借金が理由で偽装離婚をしたが、元夫は、その後、なんと別の女と婚姻届を出した。知識がなかったので、夫の借金を佐藤愛子さんが肩代わりして返済した。のちに、法人の負債の場合、社長の妻に借金返済の義務はないと言われたそうです。されど、そのことを題材にして出した小説、『戦いすんで日が暮れて』が直木賞を受賞して、大ヒットしたそうです。

『第3章 「我慢しない」が信条100歳インタビュー③』
 歳をとって、老化によって、目が悪い、耳が聞こえない。
 なんだか、どうでもよくなる。
 外出はほとんどしない。
 女にとって、結婚は、がまんするという意味だそうです。がまんができないなら離婚です。
 
 長生きしたいと思っていなかったのに、長生きをしている。
 
 苦界(くがい):遊女の境遇

 お金に対する執着心はない。損得にも興味はない。
 父親の教えで、損得を考えなくなった。
 父の教えだと、損得にこだわるのは下衆(げす。心が卑しい人(いやしい人)。身分がとても低い人)がすることだそうです。
 だまされたっていい。人生なんてたいしたもんじゃない。そんなふうに書いてあります。すごいなあ。

 恬淡(てんたん):あっさりした人。名誉や利益に執着しない。

 死に方を自分で選ぶなんてぜいたく。戦争で命を落としていった若い人たちのことを思うと申し訳なくなる。

 テレビ番組、『徹子の部屋』から出演依頼がたびたびくるけれど断っている。耄碌した姿を見られたくない。耄碌(もうろく):老いぼれた。

 101歳の自分に、未来というものはない。
 死ぬのは、こわくもないし、嫌という気持ちもない。

『第4章 愛すべき家族と相棒たち』
 この部分は過去の手記です。

 知っている人たちが自分よりも先に亡くなっていった。
 なんともいえない寂しさ(さびしさ)がある。
 もう一度会いたい人たちがいる。
 でも、もう誰もいない。

「父 佐藤紅緑(さとう・こうろく) 小説家、劇作家、俳人 1949年(昭和24年)74歳没
 頑固おやじだったそうです。窮屈なことがキライな自由人だったと読み取れます。ご本人は、だらしがなかった。

コハゼ:足袋(たび)にある金属の留め具(とめぐ)
慨歎(がいたん):気が高ぶるほど嘆いて心配すること。
気韻(きいん):気品の高い趣(おもむき)
冒瀆(ぼうとく):神聖なものや清らかなものを汚すこと。(けがすこと)

 佐藤愛子さんは、父の佐藤紅緑さんの血筋を引いて性格が父親によく似ているそうです。

「母 三笠万里子 舞台女優 1972年(昭和47年)78歳没」
 夫婦ゲンカが多かったそうです。父は、感情家で、母は、理性的な人間だった。母のくちぐせは、ものごとを大局的に見る。客観性を重視する。
 性格は異なるふたりだったが、コンビとしてはいい具合だったようです。
 佐藤愛子さんは母親とよくケンカをしたが、母親を尊敬もしておられます。

「兄 サトウハチロー 詩人、作詞家、作家 1973年(昭和48年)70歳没
 わたしは、中学生のころ、作詞された歌詞や母親を思う詩などから、サトウハチローさんは心優しい人で人格者だと思っていましたが、その後、現実のことが書いてある書物などを読んで、本当は自分が思っていたイメージとはぜんぜん違う人だということがわかりショックを受けました。
 こちらの本では、『不良セガレ』と書いてあります。
 同様に、詩集、『一握の砂(いちあくのすな)』を出された石川啄木さんも、のちに、けっこういいかげんな人だったことを知り、おとなになってから残念な気持ちになりました。

 芸術家のみなさんたちは、屈折した心理をおもちです。言っていることとやっていることが正反対だったりもするのです。なんだか、じょうずに人をだました人がお金持ちになるような気がするのです。受け手である自分は賢くならねば(かしこくならねば)だまされてしまうと警戒するのです。
 作者と作品は別物と考えたほうがいい。作品は、作品として世に出た瞬間に作者の手元を離れて、受け手の解釈で理解されるのです。

 佐藤愛子さんは、平穏無事な家庭環境で育った人ではありません。
 また、平穏無事な人生を送られた人でもありません。
 むしろ、攻撃的な人生でした。荒波の中を突き進んできた人です。

 サトウハチローさんは、佐藤愛子さんよりも20歳も年上の兄です。(異母兄)
 佐藤愛子さんには4人の兄がいた。
 4人とも不良だった。長兄のサトウハチローさんが、一番の大不良だった。
 されど、不良に寛大な世の中だった。(戦前の頃)
 青春とは無軌道なもの。いけないとわかっていてもやる。やってしまうのが青春だ。無軌道は一過性のもので、青春を通過して人はおとなになる。厳しい対応だけでは、若い者の気持ちは育たないというような意味合いの文章が書いてあります。
 放恣(ほうし):勝手気ままで節度がないこと
 大切なことは、『大きく理解する心』
 
 鵠沼(くげぬま):神奈川県藤沢市南部の海岸中央部

「乳母(うば):ばあや」
 佐藤愛子さんが6歳ぐらいのとき世話になっていたばあやのことが書いてあります。
 佐藤愛子さんは、実母よりもばあやが好きだったそうです。
 ばあやのお乳を飲んで育ったそうです。
 (なんだか、太宰治さんと似ています。太宰治さんも自分の子守りをしてくれた越野タケさんを慕っておられました)
 佐藤愛子さんは、ばあやから、『……この世にはイヤでもどうしてもせんならんことがおますんや』ということを学んでいます。
 やりたいことはやって、やりたくないことはやらないのは、こどもです。やりたくなくても、やらねばならないことはやるのがおとなです。

「夫 田畑麦彦 小説家、劇作家、俳人 2008年(平成20年)80歳没」
 二人目のご主人です。事業の失敗で偽装離婚後、佐藤愛子さんの知らぬ間に、ほかの女性と入籍されています。
 
 シームレス:継ぎ目がない衣類
 正鵠(せいこく):物事の一番大切なポイント

 読んでいて思うのは、佐藤愛子さんの歴史であり、日本文学界の歴史です。

 借金の額は、3000万円ぐらい。(1967年頃。昭和42年頃)(ちょっと記述内容が変化していくのですが、このあとにある138ページと142ページには、2億円と書いてあります。現代の金額に置き換えてあるのだろうか)

「師:吉田一穂(よしだ・いっすい 男性) 詩人、評論家、童話作家 1973年(昭和48年)74歳没」
 佐藤愛子さんが出会えて良かった人のおひとりです。
 吉田さんのおかげで、自分は挫折せず、希望を失うことなく今まで生きてくることができたそうです。
 吉田さんは、単純な人だった。美しいものは、美しいといい、美しくないものは、美しくないと言う人だった。
 いつも自分を力づけてくれる人だった。むずかしいところもあったけれど、心の優しい人だったそうです。

「師:臼井栄子(うすい・えいこ) 整体指導者 2005年(平成17年)91歳没」
 苦しいことから逃げようとするとますます苦しくなる。逃げないで、苦しいことの中に居座るとらくになる」ということを教えてくださったそうです。
 佐藤愛子さんの恩人です。
 (読みながら思うのは、もうみなさん亡くなっているということです。しみじみくるものがあります。自分を助けてくれる人がいないと人は生きられません)

「遠藤周作 作家 1996年(平成8年)73歳没」
 いたずら好きな人だったそうです。人を笑わせることが好きな人だったそうです。
 読みながら思うのは、なんというか、人はみなそれぞれ個性的なのです。画一的にこの人は、こういう人という評価なり、分析なりはしにくいのです。評価をしてもしょうがないという気持ちにもなります。もう、みなさん、この世の人ではありません。今生きている人たちも、いずれこの世の人ではなくなります。

 遠藤周作さんがやった、佐藤愛子さんの娘さんの結婚式での祝辞がとてもおもしろい。笑いました。
 「小説を書く人間はみな、おかしな人であります」(たしかに。この本を読んでいると納得します)
 
「川上宗薫(かわかみ・そうくん 本名の読みは、「むねしげ」さんだそうです 1985年(昭和60年)61歳没)
 この部分の記述は長かった。それだけ、佐藤愛子さんに思い入れがある方です。
 まだ、わたしが高校生ぐらいだった頃の川上宗薫さんは、男女のからみである情事を文章でねちっこく表現するポルノのようなエロい文章を週刊誌などに書いておられました。あまり好感をもたれるような人物ではなかったような印象が自分にあります。
 されど、人間というのはわからないものです。川上宗薫さんは佐藤愛子さんの心の支えになっておられます。お互いに男女の恋愛関係はなく、親友、(愛子さんから見て)自分の弟という位置づけだったそうです。加えて、城山三郎さん(小説家。2007年(平成19年)79歳没)が、川上宗薫さんに、きみはいい小説を書いていたのに、残念だみたいなことを話されています。
 癌で亡くなりましたが、半世紀前ぐらいは、癌の宣告は、死の宣告であり、当時の川上宗薫さんには癌の告知がなされていません。本人への病名は、食道潰瘍(しょくどうかいよう)です。
 いろいろ、濃厚な話が書いてあります。
 
鎧袖一触(がいしゅういっしょく):鎧(よろい)の袖(そで)で、ちょっと触れただけで、敵をやっつけること。

 人間のいいかげんさ、人間の不思議さ、そんな話が書いてあります。

おざなり:いいかげん

 女遊びを続けていた川上宗薫さんは、仲間内ではとても好かれていた人間だったそうです。
 とにかくおもしろい人だった。(そんな人も、今はもうこの世にいません)

「北杜夫(きた・もりお) 作家、精神科医 2011年(平成23年) 84歳没」
 変人だったそうです。(わたしは高校生のころ、この方の本をよく読みました。『楡家の人々(にれけのひとびと』が面白おかしく楽しかった)
 精神科医なのに、ご自身が躁うつ病で、ご家族がたいへんな迷惑被害にあわれました。
端倪(たんげい)すべからざる:物事の成り行きを予想できないこと
衒い(てらい):自分の能力を言葉にちらつかせること
同人誌:同じ志(こころざし)の人たちがお金を出しあってつくる本

 佐藤愛子さんにとっては、賢い兄が、「遠藤周作さん。同じ年生まれですが、遠藤さんのほうが生まれ月が早い」で、愚かな(おろかな)弟が、「川上宗薫さん。1歳年下」と「北杜夫(きた・もりお)さん。4歳年下」さんだそうです。

エンゼン(艶然):美しい女性がにっこりと笑う
嗟嘆(さたん):感心してほめること

「中山あい子 詩人、作詞家、作家 2000年(平成12年)78歳没」
 大人物だった。(すぐれた偉人)
 世の中には、「どうでもいいこと」がたくさんあって、でも、凡人は、「どうでもいいこと」を気にして気楽に生きられないけれど、 中山あい子さんは、何にでも「ガッハッハ」と笑ってこだわらない人だった。

大吾(だいご)の人:迷いを捨て、悟りきった人(さとり:心理を会得する。えとく:理解して自分のものにする)

 「人間も死んだらゴミだ」の記述部分がおもしろかった。
 邦画、「プラン75」では、75歳になった希望者には、日本政府の施策で、安楽死と丁重な弔い(とむらい)が保証されるのですが、実は、ゴミ焼却場で焼かれて終わりなのです。
 わたしは抵抗感をもって、その映画を観たのですが、中山あい子さんは、人間、死んだらゴミだから自分は葬式はいらないとして、「献体(解剖して医学や医師、医師見習いの役に立つ)」を申し込んで、そのようになさったのです。物は考えようです。死んだら、本人の魂は、借り物の体には宿っていないのです。中山あい子さんは、大人物です。

『第5章 物書きの境地』
 佐藤愛子さんが小説家になったいきさつについて、時代を追って記述されています。それなりのご苦労が合って、長年の執筆継続があって、ようやく作家として独り立ちされています。
 最初のご主人との間にこどもさんがふたり。(夫死亡後、夫の実家が引き取った)
 二度目のご主人との間にこどもさんがひとりおられます。
 いろいろたいへんなことを体験されています。なんだか、今春始まったNHK朝ドラ、『あんぱん』に出てくるこどもさんの母親みたいです。(実母の方は、やなせたかしさんと弟を親戚に渡して、ご自分は再婚されています)
 
 佐藤愛子さんのことです。
 我儘者(わがままもの)です。
 世間の常識からはずれた言動をします。(父親の佐藤紅緑さんと似ているそうです)
 「小説を書く人間はみなおかしい」という理屈から、若い頃の佐藤愛子さんは、自分がやれる職業は、小説家しかないと断定します。
 生きるよすが:よりどころ、方法、頼り
 「男に扶養されて暮らす生活」をつまらない人生だと考える。
 
曙光(しょこう):夜明けに差してくる太陽の光
吉川英治:小説家。1962年(昭和37年)70歳没

 だいじなことは、人から何を言われても書き続けること。
 能力的に、自分は文章を書くことで生計を立てることしかできないと思い込んでおられました。
 書き始めて20年目、1969年(昭和44年)にようやく、作品、『戦いすんで日が暮れて』で、直木賞を受賞されています。

『九十歳。何がめでたい 小学館』
 本は読みました。映画は先日動画配信サービスで観ました。そのうち感想をアップします。
 エッセイを映画化してあります。

『九十八歳。戦いやまず日は暮れず 小学館』
 読んだことがあります。エッセイ集です。
 気楽に読める本です。
 著者が転倒したシーンの記述には臨場感があります。(読者がその場にいる感じ)
 助けを呼んで、来てくれる人がいるうち(家)はいい。ひとり暮らしや複数で暮らしていてもひとりのような生活の人もいます。

 人の寿命は人それぞれです。本を読みながら、残された時間をどのように過ごそうかと考える読書でした。  

Posted by 熊太郎 at 07:39Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年04月17日

ガソリンが高い

ガソリンが高い

 最初は野菜類だった。野菜類の値段がばかに高くなった。
 次に米がなくなった。
 ようやく米がスーパーの棚に出てきたと思ったら、米の値段が高くなった。
 米の値段はなかなか下がらない。

 あれは、2月下旬のことだった。
 車のガソリンを入れるために、いつものガソリンスタンドに行ったら車がいっぱいの大混雑だったので、翌日、少し離れたところにある別のガソリンスタンドへ行った。不思議とそこのスタンドは、すいていた。
 値段を見てびっくりした。1リッター183円だった。
 長い間生きてきたが、これまでで一番高い値段だ。
 思い出すに、自分が二十代だった昭和50年代に、1リッター175円あたりの価格でガソリンを入れた記憶がある。あのときはなにかの原因で不景気な瞬間があった。
 ああ、今回の183円で、わが人生における、ガソリン高値の記録更新だ。
 車について、最近はあまり距離を乗らなくなったし、基本的に電動モーターで動くハイブリッド車なので、ガソリンを入れる回数もそれほど多くはない。入れても10リッター前後だ。
 車が密集するいつものガソリンスタンドに行くことが苦痛だったので、すいていたそのガソリンスタンドでガソリンを入れた。12リッターぐらい入れた。2200円ぐらいだった。南海トラフ地震がいつくるかわからないので、ガソリンは、なるべくこまめに満タンにしておくように心がけている。トイレットペーパーの予備も確保してある。大地震がきてまっさきに困るのがトイレだ。非常用トイレセットも用意してある。当然、ペットボトルの水も備蓄してある。でも、大地震は来てほしくないというのが本音だ。もし大地震が起きたら、大混乱になると思う。とくに、電子マネーのたぐいは使えなくなるのではないかと心配はしている。

 先週、テレビで食べ物を素材にしたドラマを見ていた。(NHK火曜ドラマ10、『しあわせは食べて寝て待て』、薬膳(やくぜん)が素材です)
 みかんの皮を乾燥させたものを食材で使用していた。
 ふと、思った。
 ((みかんを食べるシーズンを過ぎたが、今シーズン、自分は)みかんを食べなかった)
 愛妻に確認した。自分は、今シーズン、みかんを食べなかったと思うと。
 わたしも食べなかったという答えが返ってきた。
 どうしてだろう? と問うと、
 『高かったから』と、返答があった。そうか。そういえば、ばかにみかんが高かった。

 ひとり暮らしをしていた若い頃、秋が来て、そういえば、自分は、今年の夏、スイカを食べなかったと気づいたことがある。
 もしかしたら、今年の夏スイカを食べなかったのは、日本中で、自分だけではなかろうかと思ったことがある。
 そして今回は、みかんのシーズンにみかんを食べなかった家族は、日本中でうちだけではないだろうかと思った。  

Posted by 熊太郎 at 06:49Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り

2025年04月16日

観劇 『屋根の上のバイオリン弾き』

観劇 『屋根の上のバイオリン弾き』 愛知県芸術劇場(名古屋栄にあります)

原題:Fiddler on the Roof (Fiddlerは、ラテン語でバイオリン弾きです)
ラテン語:イタリア半島中西部で生まれた言語で古代ローマの拡大とともにヨーロッパに広まった。西ローマ帝国が476年滅亡。東ローマ帝国が1453年滅亡

台本:ジョセフ・スタイン 時代は1905年(日本では明治38年。日露戦争で日本が勝利したときです) 劇中の場所は、『アナテフカ』というところで、観劇していて、現在のウクライナのどこかに思えました。

俳優:
テヴィエ(市村正親 いちむら・まさちか。5人娘のおやじさん。帝政ロシア領に住むユダヤ人で牛乳屋を営んでいる)

ゴールデ(鳳蘭 おおとり・らん。テヴィエの妻)

ツァイテル(長女 美弥るりか みや・るりか)
モーテル・カムゾイル(ツァイテルの彼氏 上口耕平 うえぐち・こうへい)

ホーデル(次女 唯ふうか ゆづき・ふうか)
パーチック(ホーデルの彼氏 内藤大希 ないとう・たいき)

チャヴァ(三女 大森未来衣 おおもり・みらい)
フョートカ(三女の彼氏 神田恭平 かんだ・きょうへい)

さらに、四女シュプリンツェ(宮島里奈)、五女ビルケ(東菊乃)がいますが、外見が高校生か中学生ぐらいの女優さんに見えました。劇中、当人たちの恋愛話はありませんでした。

ラザール・ウォルフ(肉屋。お金持ち。今井清隆)

屋根の上のバイオリン弾きの意味:冒頭付近でテヴィエ(市村正親さん)から説明があります。屋根の上で不安定な体勢でバイオリンを弾くことと、ユダヤ人の不安定な暮らしぶりを重ねてあります。
 バイオリン弾き役の俳優さんは、劇中、たいてい、屋根の上でバイオリンを弾いていますが、劇中の会話には入ってきません。観ていて、バイオリン弾きは、『妖精』のようなものだと感じました。

 現在の社会情勢として、ウクライナとロシアが戦争状態で、イスラエルのユダヤ人がパレスチナガザ地区のパレスチナ人を攻撃していて、劇中の会話の中に、現在のウクライナの首都、『キーウ』という地名も出てきて、観るほうはちょっと複雑な気持ちになります。
 されど、意識を変えてみると、わたしたち世代のもうひとつ上の日本人世代と似通った(にかよった)状況があることに気づきます。物語の素材は、結婚の話です。

 劇中では、長女、次女、三女の結婚話で、すったもんだの大騒ぎがあるのですが、わたしの親や叔父・伯母の世代が体験した結婚話の状態と内容が同じです。
 今でこそ、結婚は両性の合意で成立しますが、昔は、個人+個人ではなく、家+家でした。見合い結婚が多かった。跡取り目的で、養子の話も多かった。
 異性である相手のことを良く知らないまま、親が決めた相手と結婚していました。そして、どちらかといえば、女性のほうが、離婚はなるべくしないようがまんしていました。
 結婚においては、まずは、収入を得て、生活していくことが第一目標でした。そんな時代がありました。基本は男尊女卑の社会が、当時の秩序でした。

 こちらの劇中では、娘たちの結婚相手を親たちが段取りするのですが、娘たちは親たちの意向に従わないので、娘たちの結婚をめぐって、すったもんだの争いが起きます。親たちが決めたお金目当ての結婚相手などを、娘たちは拒否するのです。
 娘たちの父親である主役のテヴィエは、最初、頑固者(がんこもの)に見えるのですが、娘たちから強く主張されるとたいてい引き下がるのです。テヴィエはいい人です。

 とくに今回の観劇に関する写真はありません。
 思い出すままに、感想をぽつりぽつりとこれからここに落としてみます。

 あらすじを知らないまま観劇しました。
 一家の苦労話だろうと予想しながら観始めました。
 舞台装置がとてもきれいです。美しい。
 ステージに登場してきた人たちは、お人形が動いているようでした。きれいなお人形のような役者さんたちです。

 仲人(なこうど)とか、司祭とか、しきたり(伝統)とか、ああ、結婚の話が始まったと思いました。

 そして、お金の話です。
 肉屋のおやじが、牛乳屋の(主役のテヴィエ、市村正親)長女と結婚する話で始まります。肉屋のおやじの妻は死んでいて、再婚です。長女は何も知りません。長女のいないところで、結婚の約束が成立してしまいました。肉屋のおやじは、長女の親であるテヴィエよりも年上です。それでもかまわないのです。なぜなら、肉屋はお金持ちだからです。男にお金があることが大事なのです。されど、長女は当然反発します。

 そんな感じで、次女、三女の結婚話が素材になって、すったもんだの争いが起きる劇です。

 お金持ち、貧乏、お金か愛情か、ドラマでは、よくある素材です。

安息日(あんそくび):劇中でよく出てきた言葉です。日曜日のことだろうか。調べました。休息・礼拝のための日。テヴィエたちはユダヤ教なので、金曜日の日没から土曜日の日没だそうです。

 舞台を観ていて、『タイミングの良さ』に感心しました。
 家のセットがあって、人が家の中にある別の部屋に入っていくと、同時に、家の外から別の人が入ってきます。ものすごくきちんとしたタイミングで驚きました。そのほかのことについても、ピシッピシッと動きがきちんと決まっていて、稽古(けいこ)の成果だと感心しました。

 演劇のテーマの根底には、『平和』があると感じました。
 全体的に、ロシア人に迫害のような対応を受けているユダヤ人の情景があります。
 
 ユダヤ人にとっての、『人間と神の賛歌』がありました。偉大なものを賞賛(しょうさん。ほめたたえる)のです。
 舞台は、ときおり、お祭りのようです。歌があって、ダンスがあって、音楽が鳴り響きます。
 すごい!と声が何度か出そうになりました。大迫力です。にぎやかで、観ているこちらも楽しい気分になれました。

 結婚相手のことで、娘たちから文句を言われて、板挟みになる父親のテヴィエ(市村正親)ですが、がんこそうに見えても、譲る時は譲るという判断をする、いいおやじさんです。

 『約束』にこだわる内容でした。
 宗教がかなりからんでくるのですが、あまり気にしないようにして観劇しました。
 信仰深い人たちの物語です。
 
 若い役者さんたちの歌声に伸びがあって、聴いていて気持ちがいい。
 恋愛の成就について応援したくなります。

 テヴィエ(市村正親)の動作や言葉にユーモアがあって大笑いできました。
 市村正親さんは、最初なんとなくとっつきにくい人かなあと感じましたが、ときおりのしぐさが、志村けんさんみたいで笑いました。おもしろい。76歳の方ですがお元気です。

 なんというか、時代背景として、人の気持ちのよりどころが、神しかない時代です。法律とか、思想とか、道徳とか、そういうものはまだぼんやりしていて、宗教で集団が管理されている時代だと受け取りました。宗教で、集団の、『秩序』が保たれているのです。劇中では、『しきたり(伝統)』と表現されていました。

 歌劇は大迫力で、ときに、オペラのようだと思いました。(オペラを観たことはありませんが)
 
 最終的には、ユダヤ人たちは、ロシア人たちに住んでいた土地を追い出されてしまいます。
 エルサレムへ行く人もいましたが、大半のユダヤ人は、アメリカ合衆国への移住を目指しました。
 最後のあたりで交わされた(かわされた)言葉が、『シャローム』という言葉でした。意味は、『平和』です。
 最後は尻すぼみするような雰囲気で静かに幕切れとなってしまってあっけなかった。まあ、そういう終わり方もあるのでしょう。以前名古屋伏見にある御園座(みそのざ)で観た、山崎育三郎さんのミュージカル、『トッツィー』もそんな幕切れでした。

 流れていた曲で、第1幕の最後に流れた、『陽は昇り又沈む』は聴いたことがある曲です。いい感じの曲です。
 オーケストラのみなさんは、舞台の右奥の部屋(あるいはスペース(区域))におられて、ときおり、その場所が見えるように舞台装置が動きました。それもまた、座席から観ていていい感じでした。

 観客は、わたしたちのような年金生活者の夫婦が多かった。年配の男女です。
 ラストのカーテンコールでは、2000人ぐらいいた観客が総立ちのようになって、大きな拍手が続いて、何度も幕が上がったり下がったりして、出演者のみなさんがたが、せいぞろいでステージの前の方へ出てきて何度も頭を下げておられました。壮観でした。

 幕間休憩中(30分間ぐらい)のトイレが大混雑でした。男性客が意外に多く、男性用トイレも行列でしたが、男はそれなりにスムーズに前へ進んでいました。
 女性用は、1階のトイレだけではなくて、2階、3階、4階、5階と上のほうが、たぶん利用者が少なくて、穴場のような気がしました。  

Posted by 熊太郎 at 07:12Comments(0)TrackBack(0)名古屋市

2025年04月15日

対岸の家事 TBS火曜ドラマ

対岸の家事 ~これが、私の生きる道!~ TBS火曜ドラマ 22:00~22:57 動画配信サービス

第1話:専業主婦は絶滅危惧種…!?
第2話:専業主婦は贅沢…? エリートパパとの出会い

原作:『対岸の家事 朱野帰子(あけの・かえるこ) 講談社』

俳優:
多部未華子(専業主婦。村上詩穂。娘が、苺(いちご)2歳半ぐらいに見えます)

一ノ瀬ワタル(村上虎朗むらかみ・とらお 多部未華子さんのだんなさん役。かなり優しい性格です)

江口のりこ(長野礼子。こどもふたりを保育園に預けて働いている。だんなの長野量平(川西賢志郎)は仕事で多忙なようす。実質ひとりで子育てと家庭のきりもり(物事をとりさばく)をしているように見えます。江口のり子さんのイメージからすると、未婚で、こどもなし、子育てママを攻撃するタイプの人物像が似合っているような気がしますが、今回のドラマでは逆の立場にある女性を演じています。気持ちがこもっていてなかなかの好演です。息子が、篤正(あつまさ。4歳か5歳ぐらいに見えます)で、娘が、星香(ほしか。まだ1歳半ぐらいに見えます)
 
ディーン・フジオカ(中谷達也。妻はアラブ首長国連邦都市型国家であるドバイで働くキャリアウーマン。中谷達也本人は、厚生労働省の職員)。なかなかおもしろいキャラクター設定で、ディーン・フジオカさんの風貌にぴったりです。理論的に物事を運ぼうとします。中谷達也は男子で夫ですが、2年間の育児休業中です。娘は1歳ぐらいの佳恋(かれん)です。

 子役さんたちが、なかなか芸達者で感心しました。とくに、第2話の多部未華子さんの娘で、2歳ぐらいに見える苺ちゃんが良かった。苺ちゃんがディーン・フジオカさんに立ち向かっていきます。ディーン・フジオカさんの娘佳恋(かれんちゃん)を守るために、苺ちゃんがディーン・フジオカさんと正面から闘う姿勢を見せてくれました。きっぱりとした態度が良かった。

 保育園にこどもを預けて働く女性と専業主婦をしながら子育てをする女性の対比で、『対岸の火事ならぬ、対岸の家事です』。賃貸マンションの隣同士にその女性ファミリー同士が住むことになったのです。
 我が家は、共働きの子育てをしたので、つらかった時代を思い出すことになるので、ドラマが始まっても見なかったのですが、わたしが、江口のりこさんのファンで、まあ、ちょととだけでも見てみるかという動機で観始めたところ、内容が、うちの家族にうけたので、継続して見ることにしました。
 第1話を見て家族でけっこう話が盛り上がりました。とくに、江口のりこさんが、働きながら保育園通いをする子育て生活に疲れ果てて、感情のない無表情になり、自宅玄関ドアの前で、下のこどもさんを胸に前抱きしながら手に荷物を持ち、ぼそりと、『ゲームオーバー』と力なくつぶやいたシーンで、うちの家族も同じような体験を何度かしたことがあるので、とても共感しました。いいドラマです。
 江口のりこさんが演じる長野礼子は、まじめだから、『ゲームオーバー』とため息をつくぐらいに力尽きるのです。手を抜けば続けていけます。ふまじめでもいいのです。これは、ディーン・フジオカさんにもいえます。まじめすぎると、心の平穏を保てないのです。(たもてない)。しかたがないのです。あきらめることで前に進めるときもあります。

 江口のりこさんを最初にテレビで観たのは、『鶴瓶のチマタの噺(ちまたのはなし)』という対談番組で、江口のりこさんが鶴瓶さんに、わたしは敵が多いと言われたところで、なんかいい感じの女優さんだなあと感じました。江口さんがまだ売れていない時の貧困話も良かった。師匠は、柄本明さんだそうです。劇団東京乾電池の所属です。
 その後、ご本人をじかに見たいと思い、東京渋谷パルコ劇場で、『ワタシタチはモノガタリ』という劇を鑑賞しました。けっこう舞台に近い席だったので、江口のりこさんがよく見えました。江口さんは、テレビで見るのといっしょだなと思いました。最近は、NHK朝ドラ、『あんぱん』で、まるで、アニメ、『アンパンマン』に出てくるバタコさんみたいな位置づけで活躍されています。漫画家やなせたかしさんご夫婦のお話です。

 さて、こちらのドラマです。
 共働きをしながら子育てをするのは大変です。
 我が家が体験したのは、もう40年ぐらい前の遠い昔のことですが、わたしたちよりも上の世代の人たちは、もっと苦労されていました。
 当時は、まだ週休二日制ではなかったし、育児休業などの制度はないし、こども向けの手当てなどもありませんでした。
 今では聞かなくなりましが、こどもが保育園に、はいれないと、『ベビーホテル』というところに預けて、それなりにトラブルがありました。
 今は、保育園がたくさんできて子育て環境がずいぶん良くなりました。喜ばしいことです。教育目的の幼稚園も、福祉目的の保育園のような役割を果たすようになっているようです。

 半世紀前ぐらいは、日本には、専業主婦がたくさんいました。子育ては、専業主婦の仕事でした。
 こどもを保育園とか学童保育所に預けると、世間の冷たい目が待っていました。こどもがかわいそう…… とか、なんてひどい親なんだ。そんな対応や反応は何度も受けました。イヤな思いを何度も体験しました。
 ところが、長い年月が流れて、時代が180度変わりました。
 こちらのドラマの冒頭では、『専業主婦=絶滅危惧種』と、昔とは逆で、働かずに家にいる専業主婦について、バカにするように紹介されています。

 いろいろなことを含めて、まずは、生活していくためには、お金がいります。こどもに関して言えば、大学の費用はかなりかかります。100万円単位でかかります。できれば、奨学金という大きな借金は背負いたくない。大学生がアルバイトに追われて勉強ができなければ本末転倒です。
 もうひとつは、こどもは母親だけが育てるのではなく、両親と親族一同、そして、地域社会で育てていくものです。ちびっこのうちから人にもまれていたほうが、さきざき精神力の強い人間として集団の中で生きていけます。
 とりあえず、ここに書くのはそれだけにしておきます。
 ふりかえってみれば、親として、『若い』からやれたということはあります。体力もスピードもありました。

 こどもがちびっこの期間、保育園とか、幼稚園とか、たいへんですが、その期間はあっという間に過ぎて終わってしまいます。
 親として、こどもには、とりあえず、食べさせる。それから、こどもはすぐ病気になるので、病院へ連れて行く。
 それだけやれれば、合格点です。とにかく、こどもが生きてくれていればいいのです。

 なにかしら、『あじさい』にこだわりがあるようなドラマにみえました。
 
 第2話では、父子家庭みたいな状態でディーン・フジオカさんが登場します。ドラマでは、子育てをしているだれしもが、『孤独』です。一日生活していても、おとなの話し相手がいません。

 子育てにおいて、ディーン・フジオカさんは、こどもに攻撃的です。
 わたしは、先日ラジオでお昼の人生相談を聞いていてびっくりしました。こどものころから親から暴力の虐待を受けてきて成人したという人の相談が、連続してありました。そのうちのおひとりは、父親に暴力で仕返しをしたいと強く訴えておられました。
 お気の毒です。
 わたしが思うに、こどもに暴力をふるう親は、自分自身も、こどものころに、親から暴力を振るわれていたと思うのです。暴力の連鎖です。
 子育てというものは、自分が育てられたようにしか、自分のこどもを育てられないという一面(いちめん)があります。

 厚生労働省職員で、2年間の育児休業中のディーン・フジオカさんが、つぶやきます。
 『働いているほうが楽だった』
 たしかに、職場には、上下関係とか、仕事をするための根拠とかルールに基づく、『秩序』があります。そりゃ、働いているほうが楽です。
 子育てはただひたすら、こどもを生かすことに集中です。気が遠くなるほどの忍耐の積み重ねです。
 ちびっこの事故は、あっという間に起こります。防ぐことはたいへんだし、事故が起きた時の対応もあらかじめ考えておかねばなりません。生きるか死ぬかの話です。いっぽう仕事は、業種にもよりますが、損か得かの話で済みます。人の生き死にまでいくことは、たいていありません。  

2025年04月14日

ザイム真理教 森永卓郎

ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト 森永卓郎(もりなが・たくろう) 発行:三五館シンシャ 発売:フォレスト出版

 『ザイム真理教』という言葉は、『財務省』と、『オウム真理教』を合体させた造語なのでしょう。
 著者は、癌で亡くなってしまいました。
 著者は亡くなっても、本は残ります。そして、本は、読まれ続けます。
 もう終了してしまいましたが、NHKドラマ10、『東京サラダボウル』では、自殺して亡くなったという刑事が、この世に、『カケラ』を残します。事件の犯人を追い詰めるための証拠となるSDカードが、ジッポーのライターの中に隠してありました。SDカードは発見されて、犯人(警察官)を追い詰めるための証拠としての力を発揮しました。
 こちらの本も、それぐらいの強い意思がこめられた本なのでしょう。人は死んでも本は残ります。
 全体で190ページあります。これだけの文章量を書ける能力に感服します。かんぷく:感心して説得させられる面がある。
 本は、2023年(令和5年)に発行されて、2025年(令和7年)で32刷されています。よく売れている本です。著者は、2025年(令和7年)1月に病死されています。67歳でした。ご冥福をお祈り申し上げます

カルト集団:特定の教祖を熱狂的に信じる集団。被害者が出ます。

 現在の日本経済のありようについては、失望しかありません。
 これから先、日本の経済は衰退していくという暗い見通ししかありません。
 日本社会のようすとして、みんながみんな貧しくなるのではなく、格差社会です。富める人は富み、そうでない人は生活苦を感じながら日々を送るのです。
 国に頼れないから、個人で対策・対応を考えます。
 そのヒントをこの本は与えてくれるのではないかという期待をもって読み始めます。

『第1章 ザイム真理教の誕生』
 現在の財務省の前身である大蔵省のことが書いてあります。
 主従関係、隷属関係で成り立っていた組織とあります。
 下部組織は、絶対服従だったそうです。民主主義国家ではありませぬな。

 ひどい話がいろいろ書いてあります。
 異常で異様な世界です。
 国の組織だけではなくて、都道府県・指定都市、市町村の組織も似たり寄ったりなのではないかと想像は広がります。
 接待で、物事が決まります。官民間の接待関係もあるのでしょうが、本では主に、官官接待について書いてあります。接待費の原資は税金です。予算化されたお金を接待に使います。交際費なのでしょう。組織で働く人たちは、人のお金で飲み食いする人たちです。(ひどい)。
 ただ、それで、得をする人たちもいます。

『第2章 宗教とカルトの違い』
 「日本史」の話があります。
 鎌倉時代に誕生した、『宗教』の話です。
 うそだとわかっていて、うそをつく。うそをつくことで、庶民の苦痛をやわらげることができる。念仏をとなえれば、極楽浄土へいける。
 じっさいは、人が死んだら、『無』になるだけで、極楽浄土や天国などにいけるはずもない。あの世なんて存在しない。宗教で描かれている世界観は、『虚構』だ。苦しむ庶民を救うためには、うそを信じさせてもかまわない。そんな話が書いてあります。

 信仰心をもたせるための手法です。
 『こういう行動をすれば、幸せになれる。天国に行ける』
 『こうしなかったら、不幸になる。地獄に堕ちる』
 
カルト:あなたには悪霊がついている。あなたは原罪をかかえている。不安をあおり、恐怖心を与えて、マインドコントロール(思考をあやつる。洗脳する)する。
 洗脳の手法として、「不退去」「退去妨害」「威圧」「模擬恋愛による心理誘導」「霊感商法」など。
 信者からお金を吸い上げる。(少額なら問題にならないが、大金になると殺人事件が起きたりもする)

 ディズニーランドの話、仲良しサークルのような財務省の中の雰囲気について書いてあります。その箱(組織)の中だけで通用する文化があります。

『第3章 事実と異なる神話を作る』
 (なかなか厳しい領域に言葉を突っ込む内容になっています)
 経済に関する記述は、一度読んだだけではわたしにはわかりません。
 あとは、もう、終わったことなのだなあという本の内容です。
 いろいろと、すったもんだがありました。
 これからもあるのでしょうが、読んでいると、本当の情報はどこにあるのだろうかと疑心暗鬼(ぎしんあんき。疑り深くなる(うたぐりぶかくなる)。不安になる)のです。

 財務省の説明には、意図的な意識の操作がある。(それが、著者がいうところの、『洗脳』なのでしょう)
 財務省が国民に言うところの、『日本は少子高齢化で、社会保障費が必要だから消費税を増税しないと国家予算が破たんする。』(などということはないという解説と記述が続きます。そうなのかと、納得できそうな記述です。数値の解釈、表示に、いろんなからくりがあります)
 アベノミクスの成否についても書いてあります。
 小泉政権下での非正規雇用の増加についてのコメントもあります。

『第4章 アベノミクスはなぜ失敗したのか』
 消費税の引き上げで、うまくいかなくなったと記述があります。
 読んでいるとなるほどと思えます。
 お国のいうことに従っていれば、平穏無事に暮らせると、従順にしている国民は案外、権力者たちにじょうずに利用されているのではないかという暗い気持ちになります。
 一部の富裕層と、多数のそうではない層ができあがって、二極化して、中間層が薄くなっているようです。
 たとえば、消費税率を下げるとか、なくすとかすると、景気は活発になるのでしょう。(勇気がいりますが……)
 
 コロナ対策のことも書いてあります。(正直、ひどかった)
 学校を全校休みにしました。全国民にマスクを配布したことなど、いくつか例示されています。
 日本国民は従順でおとなしいことを利用して、やらなくてもいいことまでやったのです。
 
 うそがあった森友学園のことも書いてあります。公文書の内容の改ざんを組織の上層部がやるなんて信じられません。指導する立場の人たちです。頭がおかしい。国と国民との信頼関係は終わりです。
 形だけを整えるという政治手法、行政手法です。(これから先、日本はどうなるのだろう。不安な気持ちが広がります)

『第5章 信者の人権と生活を破壊する』
 <宗教はウソをつくが、そのウソは信者に希望を与える……>
 <ザイム真理教は、信者(国民)に国家が財政破たんするという恐怖心を植え付け、増税を繰り返して国民の生活を破壊する>そんなことが書いてあります。う~む。警戒しなければ。
 読んでいて思うのは、あまりにも大きい組織に、一個人(いちこじん)は向かっていけない。
 なるようにしかならないこの世間の波を渡っていくためには、一個人として、たくましく生きていく。自分の方針をもって、自分を信じてやっていく。国という組織を頼らない。自立、自活するという思いです。

 日本経済が、平成時代の30年間、成長できなかった理由です。
 『急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ってしまったから』(たしかに、低賃金が続きました。物価も安物販売で定着しました)

『第6章 教祖と幹部の豪華な生活』
 国家公務員の天下りの、「けしからんさ(常識外れ、道徳はずれ)」について書いてあります。
 定年退職をして退職金を受け取る。天下り先の企業を退職して、退職金を受け取る。ぼろもうけです。

『第7章 強力サポーターと親衛隊』
 みんなグル(わるい仲間)なのです。
 大手新聞社は、ザイム真理教の味方としての関係者なのです。
 表面上は、対立関係に見えても、裏では握手しているのです。
 相互に、利益をワケワケしているのです。
 大手新聞社は、財務省に忖度(そんたく。意図的に協力する。思いやる)した記事を書く。
 「それで何が悪い」という意識があります。自分たちが良ければそれで良しです。

 富裕層は、財務省の味方とあります。
 税金面での考察があります。読んでいて、なるほどと思います。

『第8章 岸田政権は財務省の傀儡(かいらい。あやつり人形、手先(てさき))となった』
 それでも、日本人は、ザイム真理教を信じ続けるのだろうかという問題提起があります。

『あとがき』
 ある国会議員が、将来の消費税の税率は、25%ぐらいになると答えています。(著者は、いずれ国民生活は破たんすると決めつけています)

 まるで、著者の遺言のような本でした。
 今の政府のやりかただと、国民は、死ぬまで働いて、税金と社会保険料を払い続けろ。働けなくなったら死んでしまえというものだと書いてあります。
 今年夏の参議院選挙は荒れそうです。  

Posted by 熊太郎 at 06:35Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年04月12日

三千円の使いかた 原田ひ香

三千円の使いかた 原田ひ香 中公文庫

 前々から読んでみたかった文庫本です。
 お金がらみの短編話が6本掲載されています。
 単行本は、2018年(平成30年)の発行で、文庫本は、2021年(令和3年)の発行で、2024年(令和6年)で25刷もされている、よく売れて読まれている本です。

 以下は、登場人物である御厨(みくりや)家の女性たちなどです。

御厨美帆:実家は、東京都北区十条駅から徒歩10分ぐらいのところにある。就職して、祐天寺(ゆうてんじ。東京都目黒区)でひとり暮らしを始めた。(貯金は30万円。う~む。少ない)。
 東京西新宿にあるIT会社で働いている。会社の規模は中堅。おっさん社員がいて、女性社員への蔑視(べっし。見下し(みくだし、差別))がある。宴会ではエロ話も出る。会社ではセクハラあり。(先日NHKニュースでとりあげられていた、「#私が退職した本当の理由」ということと同じ内容のものでした)

井戸(旧姓。御厨)真帆(美帆の姉。5歳年上):結婚する前は証券会社で働いていた。(貯金600万円ちょっと)。既婚。専業主婦。一人娘として、3歳女児の佐帆(さほ)がいる。こどもがいる幸せがある。
 夫の名前は太陽で、消防士をしている。月給23万円で高くはないが、公務員で収入は安定している。夫は、労働に関する考え方は古い。男尊女卑の意識がある。セクハラトラブルが起きたときは、女性にも責任があるという発言をする。

御厨智子(美帆と真帆の母親):習い事に熱心で向上心が強い。(貯金100万円弱)

御厨琴子(祖母):(貯金1000万円)

小田街絵(おだ・まちえ):御厨美帆の職場の教育係だったが、リストラされて退職した。44歳。母親と東京杉並区内にある大きな屋敷でふたり暮らし。未婚。お嬢さま。街絵は、母親が35歳のときに生まれたこども。

長谷川大樹:御厨美帆の彼氏。女性蔑視(べっし。差別する。女性を軽くみる)の考え方をもっていることがわかり、美帆の気持ちが彼から離れていきそうになっている。

南山部長:御厨美帆の会社の人事権をもったエロ上司


『第1話 三千円の使いかた』
 祖母の言葉、『人は三千円の使いかたで人生が決まるよ』で始まりました。
 
 いろいろと考察があります。
 自分という人間にとって大切なものとは。
家:自分がすむところ。終の住処(ついのすみか)。積立金や管理費がいる分譲マンションよりも一軒家がいい。新築でなくても、中古の一軒家でいい。
身体(からだ):健康な体
お金:生きていくために必要なもの

 これから自分は、どうやって生きていったらいいのだろう。

 100円貯金の話が出ます。
 お金の貯め方、増やし方のノウハウを教えてくれる短編集のようです。
 わたしも若い頃、100円ではありませんが、毎週1回郵便局のATMに行って、郵便局の通帳に1000円ずつ入金しました。コツコツ長く続けることは、わたしにとっては苦になりません。こどものころからのそんな性格です。
 ボーナスのときには、多めに通帳に入金しました。金額の数値が増えていくことが、生活していくことの楽しみでした。お金の増加は、つらい仕事に耐えることができる動機付けにもなります。
 へんな話ですが、顧客にガンガンどなられ続けていても、心の中で、(ああ、この人よりも、自分のほうがお金をもっているからだいじょうぶ)と思ったことはあります。
 毎週積立1000円貯金は、100万円たまったら、結婚10周年記念ということで、家族そろってハワイ旅行に行こうというのが夢でしたが、二人目のこどもが生まれたときに、妻が、制度が始まったばかりの無給の育児休業を、こどもが1歳になるぐらいまで取得して、貯めていたハワイ貯金は、生活費に充当して使い果たしてしまいました。でも、それはそれで良かったと思います。

 短編のタイトル、『三千円の使いかた』の意味が判明します。
 『黒船スーコさんの節約セミナーのセミナー料が、三千円です』というわけです。
 『8×12は魔法の数字』という本を出版されています。8万円×12か月です。1年で、96万円残ります。プラス夏と冬のボーナスで2万円です。合計100万円です。複利3%で運用すると将来、何千万円にもふくらむのです。その範囲以外のお金は、使い放題です!という黒船スーコ先生の激励があります。
 『8万円』というのは、支払いが義務である家賃相当額だなあと思うのです。家賃の支払いがなければ、自然に貯めることができる金額です。


『第2話 七十三歳のハローワーク』
 今回の主役は、御厨琴子(祖母。みくりや・ことこ):(貯金1000万円)です。銀行の金利目当てにお金を動かして、貯金を増加させていく方式の資産運用をしています。期間限定、特別金利の利用です。
 お金は現金で持ち歩きます。そうやって、手数料を払わなくてもいいようにして、お金をあっちの銀行、こっちの銀行へと動かして、お金を増やします。(じっさい、そういう人っています)。
 御厨琴子は、3年かけて、利子を貯めて、40万円以上するマッサージチェアを購入して愛用しています。
 夫は商社で働いて定年退職を迎えて、65歳まで子会社の役員をしていた。年金は、夫婦ふたりで、2か月に1回26万円ぐらいだった。夫が亡くなってひとりになったら年金は、月8万円ぐらいに減ってしまった。
 琴子はずっと家計簿をつけている。
琴子の母:大正13年(1924年)生まれ。家計簿が女性誌に登場したのが、1904年(明治37年)日露戦争があった。ちなみに、日清戦争が、1894年(明治27年)でした。

小森安生(こもり・やすお):御厨琴子の男友達。琴子より年齢がだいぶ下。近所に住んでいて、ホームセンターで安売りの花のかたまりをふたりで買って、割り勘(わりかん)にしたことが縁で友達付き合いをするようになった。
 季節に応じて、北海道や沖縄でアルバイトをする生活をしている。自由人。お金には汚くない男である。亡くなった築50年の祖母宅で、ひとりで暮らしている。おばあちゃん子だった。海外旅行が趣味。祖母宅を管理している。

御厨智子((みくりや)御厨琴子の嫁。夫は御厨和彦。智子は、御厨美帆と真帆の母親):習い事に熱心で向上心が強い。(貯金100万円弱)。英語とフランス語の学習が趣味

 御厨琴子は、御厨智子の依頼で、おせち料理をつくるための先生役を始めることになりました。生徒は、語学学習の生徒さんたちです。『おせち料理教室』です。1回だけの教室でしたが、御厨琴子に働きたいという気持ちが芽生えました。

牛尾みね:御厨琴子の母親。大正13年生まれ

三田(みた):十条銀座商店街にあるコンビニ十条店の店長

 後半はほろりとくるものがありました。
 他人さまから必要とされている。人の役に立つために、自分に、『役割』がある。
 そういう話でした。
 ほかに、『家計簿をつけること』の話がありました。戦前・戦中・戦後とか家計簿をつけ続けた主婦が、日本の復興を陰で支えてきたのです。

 御厨琴子は、十条銀座商店街に新規で支店としての店舗を開設する和菓子の、『湊屋(みなとや)』でおだんごを売る仕事につくことになりました。
 

『第3話 目指せ! 貯金一千万!』
 御厨家の三代目孫娘、高校同級生消防士男性と結婚した御厨真帆のお話です。
 結婚して、苦痛だった証券会社勤務を辞めて、専業主婦になって、3歳の娘佐帆がいてという家族構成です。
 なんだか、読んでいると、家計のつましさ、倹約、節約話がせつない。
 かなりきつい生計費です。
 働きたくなかったから結婚に逃げたという負い目の気持ちをもっておられます。
 そんな彼女が、同級生の婚約話がある食事会に招かれてみじめな思いをします。
 婚約者の結婚相手はお金持ちの家の坊ちゃんです。ダイヤの婚約指輪は、1.2カラットの大きさだそうです。御厨真帆は、婚約指輪は買わずに結婚しました。同級生と自分の財力を比較して、気持ちがへこむ御厨真帆ですが、話の後半で、盛り返します。結婚はお金ではないのです。結婚の基本は、愛情なのです。

御厨真帆の同級生友だち:小春(この人が今回婚約した話題の中心人物。婚約相手が幸太郎。新居は2億円のタワーマンションの部屋(夫の両親が用意した)。結婚式は高級ホテル、新婚旅行先はイタリア)、奈美(不動産会社勤務。未婚)、郁乃(小さな食品会社勤務。未婚)

 御厨真帆宅の1か月の家計状況です。
 旦那の給料:23万円。ボーナス
 4万5000円で生活する。
 食費:月2万円
 日用品代:5000円
 1週間に5000円で、4週間生活する。
 合計4万5000円
 さらに、
 だんなのこずかい:2万円
 家賃:8万8000円
 あとは、スマホ代(夫婦とも)、光熱費、生命保険料(夫のみ2000円)、予備費です。
 貯金:6万円
 貯金の目標は、1000万円です。用途は、こどもの大学費用がメインです。(現在までに貯めたのは、600万円ちょっと)

 節約の見返りは、お金が残るということです。

 最後に、商店街の和菓子屋で働き始めた祖母の話がチラリと出ます。家計簿をつけましょうねという話です。
 ちゃんと死ぬのにもお金がいります。祖母がそんな話をします。今の貯金額では、ちゃんと死ねないのです。先日観た、倍賞千恵子さん主演の邦画、『プラン75』を思い出しました。75歳になって、お金がない人は、本人の希望で、ガスを吸って死んで、焼却場でゴミとして焼かれるのです。(表向きは、ていねいに弔います(とむらいます)ということになっていました)


『第4話 費用対効果』
小森安生(こもり・やすお):御厨琴子(みくりや・ことこ)のお友達。もうすぐ40歳

れな:小森安生のバイト先(漁港)の二十歳の大学生。バイト仲間。小森安生に馴れ馴れしい(なれなれしい)。小森はそれを嫌がっている。手足が長い。髪の毛がふわふらしている。裕福な家の子ども。

本木きなり(もとき・きなり。30歳過ぎ。旅行ライター):小森安生が付き合っている女性だが、今はふたりの間に冷たい風が吹いている。本木きなりは、小森安生と結婚したいが、小森安生は結婚を考えていない。ひとりで気楽に生活していきたい。本木きなりは、職業的にも自立した女性で、お金がある。結婚したら、小森安生に、『主夫』になってもらうことを願っている。

 本木きなりと、井戸真帆(旧姓御厨)が会います。
 お金の話になります。
iDeCo:イデコ。個人型確定拠出年金(こじんがたかくていきょしゅつねんきん)。私的年金制度。税制で優遇される)
小規模企業共済:退職金の積み立て。税制上の優遇あり。
 
 う~む。小森安生はいいかげんな人間です。いわゆるバックパッカー(個人旅行をする人。ときおり現地でバイトをする)は、わたしは、逃げる人だと思っています。今ある困難に立ち向かって、今いる場所に根をはって、しっかりと生活していく人ではありません。
 178ページに、自分でもこうつぶやいておられます。『昔から、ちょっと気まずいことが起きると逃げてしまう……』

 小森安生は、小森と結婚したいという本木きなりに、自分はこどもはいらないと言って、結婚の申し込みを保留にしたがる(結婚せずにだらだらと付き合うことはよしとする)。
 そんな小森安生が、一度の浮かれた関係を、れなと、もったところ、れなが妊娠したという。れなが結婚を迫ってくる。
 バカヤローと怒る(いかる)本木きなりです。

 すったもんだがあります。
 この短編部分は、ほかの短編とは毛色が違います。毛色:様子、種類
 
 『費用対効果(投資した費用にたいるする利益)を考えていたら、こどもはつくれない』
 
 なんというか、世の中は、不合理、不条理、理不尽、不公平が当たり前なのです。
 正義をふりかざして戦いを挑んでも(いどんでも)、仲間はずれにされることが多い。
 不合理等であることを受け入れながら、気持ちに折り合いをつけて、知恵を出して、粘り強く、したたかに生活していくことが凡人としての技術です。

『第5話 熟年離婚の経済学』
 離婚時の財産分けの話です。
 女性は、離婚すると、離婚後の生活費に困ります。
 健康保険とか、介護保険とか、国民年金とか、いろいろ考えると、仮面夫婦でもいいから、あるいは、家庭内別居でもいいから、戸籍上は夫婦の形態を維持しておいたほうがいいということはあります。されど、もうぜったいに一緒にいたくないのです。

 男尊女卑、女を家政婦扱いするご主人がいます。
 家事や料理はいっさいしません。(仕事をしているからいいじゃないかというお考えです)
 料理は、妻か、自分を生んでくれた母親の仕事だと思いこんでおられます。
 困った人です。

御厨智子(みくりや・ともこ):井戸(旧姓御厨)真帆と御厨美帆の母親。夫といっしょに暮らすことがイヤになってきた。(さきほど書いた家事・料理をいっさいしない夫です)。子宮体ガンのステージⅠが見つかって入院した。

御厨和彦:御厨智子の夫。長女真帆と次女美帆の父親。

河野千さと(こうの・ちさと):御厨智子の親友。こちらは、本当に離婚する気です。夫との離婚目的のために、弁護士が入っています。千さとについて、結婚前は、航空会社の客室乗務員だった。

河野義明:河野千さとの夫。大手航空会社勤務。不倫をしている。相手は若いスッチ―(スチュワーデスの俗語、航空機客室乗務員)

河野千晶(こうの・ちあき):河野義明と千さととのこども。長女。大学生

 御厨和彦について(わたしが思うこと)
 自分が食べるメシぐらい、自分でつくれないのだろうか。米をたいて、おかずを用意して、そんなにむずかしいことでもなかろうに。食器洗いだって、やらねばならぬ。なんというか、昔の男なのね。

 御厨智子にがんが見つかって、開腹手術をして帰宅したというのに、対応が悪い夫です。
 妻を家政婦か道具のようにしかみていません。(こんな男とはいっしょに暮せません。こどもみたいな夫です。この夫は、妻がだめなら、実母にメシを用意してもらうのです)
 御厨智子がつぶやきます。『これからもずっと私はこの人のご飯をつくり続けるのだろうか……』

 わたしはときおり、お昼のラジオ番組で、人生相談を聴きながらお昼ご飯を食べているのですが、親子、兄弟姉妹、親族間で、うまくいっていないところがたくさんあるのだなあということがわかります。
 うわべでは、何事もなく、仲良しそうに見えている家族や親族でも、一歩中に入るといろんなトラブルをかかえておられます。
 まあ、どこの一族にも、トラブルメーカーになりそうな身内のひとりやふたりはかかえています。
 
 女性の、『更年期(こうねんき。女性ホルモンの分泌が急激に減少する時期)』の話になります。
 熟年離婚のときの財産等の分割割合の話になります。
 
 『……この人(夫)は料理もできないくせに私の作ったものを感謝もなく黙って食べているのか……』(御厨智子さんの夫に対する怒りは爆発寸前です。よく話し合ったほうがいい。話し合いをしないで、いきなり感情的になって爆発すると、とりかえしがつかなくなることがあります)

 (男と結婚するときは、できれば相手に自炊体験がある人を選んだほうがいい)

 そして、相談料1時間3000円のフィナンシャルプランナー黒船スーコに相談するのです。

 『離婚は人生の終わりじゃない。新しい人生の始まりなんですよ』(なるほど)

 ばかな、だんなだなあ。


『第6話 節約家の人々』
 最後のお話になりました。
 御厨美帆(みくりや・みほ、次女、未婚)の話です。
 付き合っていた大樹とは別れたそうです。
 今付き合っているデザイン事務所勤務の沼田翔平と結婚しようとしたら、翔平に奨学金という借金があることが判明しました。550万円(月々3万500円の返済。利子3%。返済期間20年。最終的に700万円以上支払うことになる)。親が勝手に翔平の名前を使って借りていたそうです。
 そして親は、返済は、翔平がするべきだと主張しているのです。さて、どうしようです。(そんなことができるのだろうか。虚偽の奨学金受け取りについてです。まあ、本人が返すべきでしょうな。奨学金のおかけで、美術大学を卒業できて、デザイン事務所に就職で来たのですから。しかし550万円は多額の借金です)。御厨家からは、美帆の結婚に反対する声が出てきます。
 <後日の追記事項:たまたまですが、札幌地方裁判所で、似たような事例で、日本学生支援機構が敗訴するという判決が3月21日に出ました。親がこどもに黙って奨学金を借りています。親が返済していたのですが、返済できなくなって、98万円の(未返済分+利子)返済金が残っています。判決では、こどもに返済義務はないという判決になっています。借りた奨学金は、こどもの学業以外の別の用途に使われていました(こどもの母親のがんの治療費にあてたそうです)>

栄太:沼田翔平の父親。翔平はじめこどもたちは、父親をお父さんとは呼ばない。『栄太』と呼ぶ。上下関係のない、ざっくばらんな家庭です。
加奈子:沼田翔平の母親

 全体で337ページあるうちの294ページまで読んできて思ったことです。
 第1話の『三千円の使い方』の部分だけで、この本の趣旨は語りつくされているのではないか。
 3000円の授業料で、お金の貯め方、使い方を学ぶ。むずかしいことがあるときは、関係者一同でよく話し合う。
 話し合って、いろいろやりくりをして、ベスト(最上級)ではないけれど、ベター(最善策)な手法を考え出して実行していく。
 個々の話は、じょうずにまとめてあります。

 御厨美帆(みくりや・みほ)はブログをやっている。
 御厨美帆がブログに書いた言葉です。
 『お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない。』
 
 わたしの意見ですが、結婚話を親は反対しないほうがいい。
 とくに父親は、娘がどんな男を連れてきても、反対してはいけません。
 『おめでとう!』と一言(ひとこと)言えばいいのです。
 それが父親の役割です。
 反対してこじれると、あとあと取返しがつかない状態に発展することもあります。
 結婚するのはこどものほうです。結婚するのは親ではありません。


『解説 「他人(ひと)は他人、自分は自分」と、あなたは心の底から割り切れていますか?』 垣谷美雨
 かなり力の入った解説になっています。解説が、ひとつの作品のような内容でした。
 ご自身の経済状況や性格・性質をからめながらリアルなことが書いてある文章です。
 東京は経済格差が大きい。お金持ちにとっては楽しめるが、そうでない人たちは家賃から苦しむ。
 学生時代は平等でも、だんだん格差ができてくる。学生時代の友人でも、だんだん経済的に優劣ができてくる。年齢を重ねてから、いっしょに旅行をしようとしても、旅行の内容で話し合いがつかないから、旅行には行けない。
 旦那(だんな)の稼ぎで、妻について貧富の差が生まれてくる。
 お金のことに加えて、男次第の人生を送らねばならぬ女性の立場がせつないというようなことが書いてあります。  

Posted by 熊太郎 at 07:29Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年04月11日

伝える極意 思いを言葉にする30の方法 草野仁

伝える極意 思いを言葉にする30の方法 草野仁(くさの・ひとし) SB新書

 著者は、テレビ番組、『徹子の部屋』にゲストとして出演されました。
 徹子さんとのおふたりのトークは、おふたりともお話上手なので感心しました。清流が流れるように会話がはずみます。
 草野さんが本を出されているということなので、取り寄せてみました。
 読み始めます。読みながら感想を足していきます。

(1回目の本読み)
 わたしはまず、1ページずつ、ゆっくり最後まで、ザーッと目をとおします。
 受けた印象として、著者は、『仕事人間』です。
 1944年(昭和19年)生まれ。81歳です。
 もうひとつ、教訓本という印象です。(教え諭す(さとす)。成功するためのマニュアル(手引き))
 ありのままでいく。かっこつけない。
 就職する前から、スポーツが好きだった。NHKを取材記者になるつもりで受けたが、アナウンサーとして配属された。自分は、スポーツアナウンサーになる道を選んだ。
 黒柳徹子さんとの関りあり。番組、『日立 世界・ふしぎ発見!』です。
 著者に、鹿児島放送局、福岡放送局で勤務した時代あり。その後、大阪、東京です。
 オウム真理教、地下鉄サリン事件の報道体験あり。
 仕事上利害関係がある人間とは、なるべくケンカはしないそうです。
 統一教会問題に関する記事あり。
 
(2回目の本読み)
 NHKを取材記者になるつもりで受けたら、アナウンサーで採用された。
 希望とは違っていたが、やってみたら自分に向いていた。
 (仕事というものは、人事異動による部署異動も含めて、自分には向かないだろうなあと思っていた仕事をやってみたら、案外自分に向いていたということは、じっさいにあります。まずは、やってみること。できるように努力することで、やっていけるということは現実にはあります。100%できなくても、60%ぐらいできたら仕事を継続していけるということはあります。仕事はチームワークです。お互いの得手不得手を組み合わせて助け合ってやっていくものです)

 本のレイアウト(構造)です。学生さん向けの参考書のようでもあります。
 第1章から第4章まであって、最後に、『特別収録(有名人とのこと)』があります。
 本の構造と内容は、理論的です。

第1章 著者の実体験や実例をもとにして記述してあります。項目は、『プロが「伝える」前にやっている10のこと』です。「準備」ですな。

 日本人は歴史的に話し言葉がにがてということが書いてあります。書くことは学ぶけれど、話すことは学ばないのです。自分の脳みそにあることを、言葉にして、口から声で表現するという習慣が乏しかった(とぼしかった)。同一民族であるから、『察する(さっする。言わなくてもわかる)』ことに期待していた。そういうことについて書いてあるとわたしは理解しました。
 対して、多民族国家である外国では、『対話』をしないとお互いを理解することができなかったので、会話技術が発展した。

 相手に会う前に、相手についての情報を収集しておく。さらに、相手と同じことを自分も体験しておくと話がうまくいく。話がはずむ。

 お勉強の本です。

 マニュアルに従って、AI人間(人工知能で動いているような人間)を目指すのか……
 人間は、感情の動物です。仕事中はしかたがありませんが、仕事を離れたときは、感情のままに生活したい、話したい。

 じっさいにあった事例を提示しながら考察が続きます。
 
クレバー:ずる賢い、抜け目がない。

 日常会話のレベルを高める。
 誰にでもわかる易しい(やさしい)言葉を使って、相手が瞬間的に理解できる話し方をする。
 
 (なかなかむずかしい。わたしが思う雑談は、思いつくことを、単語でぽつりぽつりと口から出していって、時間を埋めていくものです。
 案外、人って、自分の言いたいことは言いたいのですが、相手が話していることは聞いてくれていません。
 雑談は、気持ちの交流です。仕事で行う会話ではないのです)

『第2章 相手の心をつかむ「伝え方」ベスト16』
 この章はけっこう長い。61ページから146ページまで、86ページあります。

 「言葉をひらく」文章:聞いた瞬間に理解できる言葉、平易でわかりやすい言葉を使う。わかりやすい言葉に言い換える。
 
 成功談よりも失敗談をする。

 いろいろな有名人が出てきます。
 亡くなった人もいます。
 最近自分が思うことですが、自分が三十代始めだったころに、五十代、六十代だった人たちのほとんどは、もうお亡くなりになりました。生きていても、入院されているか、認知症などになられて施設に入られています。時の流れを感じます。
 
 会話の秘訣を簡潔にまとめてある本です。
 読んでいて思うのは、著者は、『仕事人間』として人生を送ってきた人です。
 108ページに、『「?」で終わる質問をする』というようなことが書いてありますが、その手法は、わたしは好みません。なぜなら、相手に質問をするということは、相手に答えを考えさせる負担を強いる(しいる。強制する)ということです。嫌がられます。
 わたしは、質問と回答を繰り返すパターンの会話をする人との会話は疲れます。だから、自分は相手に質問はなるべくしません。自分が思うことをだらだらと話します。

 こちらの本では、全般的に、上流階級の人たちとのつきあいでの会話について書いてあります。
 凡人にはムリです。能力の水準が、著者さんほど高くはありません。
 凡人は、たわいない言葉で、気持ちの交流をするだけです。自分の言いたいことは言うけれど、相手の言うことは、聞いているようで聞いてはいません。だれしも、マイペースです。

『第3章 「伝えた」後に実践したいシンプル4習慣』
 ザ・ワイド:テレビ番組。1993年(平成5年)から、2007年(平成19年)まで放送された。14年半の長寿番組。ワイドショー。著者が出演した。
 番組での思い出話が書いてあります。

『第4章 マスターに聞く! 伝える極意・10のQ&A』
 研修のテキスト本のようでもあります。
 だれもができることではありません。
 一定の学力水準がある人向きの本です。

『特別収録 マネしたいあの人の「伝える力」ベスト6』
 なんというか、頭のいい人の傾向として、ランク付けをしたがるというものがあります。
 順位付けです。
 学力テストの延長を人生で行っているような感じがします。
 そこに、今どきのこととして、AI(人工知能)がからんできます。
 アナウンサーの業務はいずれ、AIがやるようになる。
 人間は、『ブロードキャスター』を目指すとあります。
ブロードキャスター:個人が個性をもち、自分の言葉で情報に関する自分や組織の思いを伝えていく。人間としての能力を発揮する。分析と判断に自信と責任をもつ。

 本全体を読み終えて、人間界の知識人という上層部で生活している人についての、そういうこと(会話手法)が書いてあると理解しました。  

Posted by 熊太郎 at 07:04Comments(0)TrackBack(0)読書感想文